アボカドの種を育てている方必見!アボカド栽培のほっこりする話。
だいぶ昔、とある町に仲のいいおじいさんとおばあさんがいました。2人とも、おいしいものが大好きで、一緒にいろいろなものを食べることがなによりの幸せでした。
そんなある日、おじいさんが昔の友人と居酒屋で食事をしていたとき、それまでにみたことのない食べ物に出会いました。
「これはなんだね?」
「これは、アボカドというんですよ。とろっとした食感で醤油にすごく合うんです。」
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「…おおっ!これはうまい。おばあさんにも食べさせてあげたいなぁ。アボカド、はどこに売っているのかね?」
「普通のスーパーとかには売ってないのですが、百貨店の果物の売り場にはおいてますよ」
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「…えっ、果物?!」
「はい、果物なんですよ、これ…」
「…ということは、種があったり?」
「そうですね、こんな、ごろっとしたのが」
「今、食べてるこのアボカドの種、私にください!」
家に帰ったおじいさんは、さっそくアボカドのことをおばあさんに話しました。はじめてアボカド、を食べていかにおいしかったかということ、おばあさんにもぜひ一度食べさせてあげたいということ、そして居酒屋の店主が気前よく種をくれたことを楽しそうに話すと、おばあさんは、うんうんとうなずきながら
「うちでそのアボカドとやらができるの、楽しみね」
と目を細めました。
おじいさんは家のわきにアボカドの種を植え、おばあさんと一緒に毎日毎日、成長を見守りました。種がふたつに割れてそこから芽が出てきたときも、新しい葉っぱが赤く染まっていてかわいらしかったときも、おばあさんと
「あと、どれくらいかなぁ」
といいながら、醤油以外に何があうだろうかとか、たくさんとれるようになったら、だれに食べさせてあげようかとか、わくわくしながら想像していました。
しかし、アボカドの木はなかなか実をつけませんでした。毎年みるみる大きくなるものの、10年経っても花すら咲きません。
「おじいさん、なかなか実がつきませんねぇ。」
「うーん。でも、もうちょっと待ってみよう。もしかしたら、ゆっくり、時期をみはからっているのかもしれないよ。」
それから、実のならない木の成長をずっと見守り続けて、さらに5年くらいたったある日の朝、小さくて白い花がぽつぽつと咲いていました。
「おじいさん!アボカドの木に花が咲いているわ!」
「ほんとだね、すっかり高くなっていて、つぼみに気がつかなかったよ。」
「待ち続けてよかった。あと、もうすこしでアボカドが食べられますね。」
ところが、それからまもなく、おじいさんはアボカドを食べられないまま亡くなってしまいました。おばあさんは悲しい気持ちでいっぱいでしたが、おじいさんが残してくれたアボカドの木を大切に大切に育てました。
「きっと、おじいさんが天国からみてくれているよ。」
毎年、春になり咲く白い花をみると、おばあさんはいつも、はじめて花を発見したあの日のことを思い出しました。
そして、おじいさんの13回忌を迎えた年、アボカドの木は実をつけました。秋になったある日、よーくみてみると長細い実が鈴なりになっています。
「おじいさん、アボカドが実をつけたよ。長いこと待って、よかったね。」
「アボカドの木があるらしい」
ということを聞きつけて、たくさんの人が木をみにきました。冬になって実が取れる時期にはおばあさんがはちみつと一緒にジュースにしてみんなにふるまいました。
たくさんの人がアボカドを育てたいとおもい、おばあさんにいろいろ聞きました。
「おいしいねぇ、うちでもそだてられるのかなぁ?」
「どうやったら、たくさん実をつけられるの?」
「そうねぇ、やっぱり一番大事なことは気長に待つことなのかしら。」
おばあさんは微笑みながらこたえました。
おわり